本とCDの日々(仮)
本やCDやDVDの感想を書いたり書かなかったり。
2009/07/01
TITLE:「 魂のゆくえ 」
![]() | 魂のゆくえ (2009/06/10) くるり 商品詳細を見る |
また大仰なタイトルでくるりらしからぬタイトルのような気もしたが、音を聴いてみたらもう気持ちよいとしか言うことの出来ないくらい充実の1枚。これまでもアルバム毎にそのスタイルを変えつつ、それでも揺るがぬくるり節を聴かせてきた彼らだが、今回は特にこれに拘るということもなく、原点回帰と言うかロックンロールを楽しんでいるといった趣。いつになくシンプルなアレンジに岸田繁のぶっきらぼうなヴォーカルがはまりすぎるくらいはまっている。要するに聴いていて気持ちが良いというのは、ジャンルが好みとかそういうことではなく、そこにあるいろいろな音がジグソーパズルのピースのひとつひとつのように過不足なくピタリとはまっている状態の音楽を指すのだということだろう。意味が分かるようで分からない、岸田繁の歌詞も素晴らしい。
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2009/06/25
TITLE:「 この世界の片隅に 」

この世界の片隅に/こうの史代
故黒木和雄監督の「TOMORROW 明日」という映画は昭和20年8月8日(つまり原爆が落とされる前日)の長崎市のある家族の姿を描いていたが、本書はいくつかの断片的なプロローグのあと昭和18年末から終戦を経て昭和21年はじめまでの、ある家族の物語。広島市から呉市に嫁いだ主人公を中心に、戦中戦後の日常生活が事細かに描かれる。これが戦時下の物資に乏しい生活ながらおっとりした性格の主人公のおかげで、現代に比べて決して悪くないんじゃないかと思いそうになるほど魅力的で楽しそうに見えるのだが、もちろん読者は舞台は呉とはいえ広島に最悪の不幸がやがて訪れることを知りつつ読み進めるわけだから心から微笑んだりは出来ない。いよいよ3巻目に入ると度重なる空襲そして8月6日の原爆投下を経て終戦まで、読者は主人公とともに悪夢の中にいるような展開を味わうことになるのだ。個人的には最終話がやや余計な気がしないでもないが、世評の高い「夕凪の街桜の国」の何倍も胸に迫る物語。気楽に読み飛ばせる類のマンガではないので、すべての人に読んで欲しいとは思わないが、心ある人には強力にお薦めしたい名作。もう何度も読み返しているが、その度に違うところで言葉を失ってしまう、そういう力のあるマンガである。
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2009/06/23
TITLE:「 Oh!RADIO 」
![]() | Oh! RADIO (2009/06/17) 忌野清志郎 商品詳細を見る |
デザインは井上嗣也。“Oh!ラジオ、届けておくれ、この愛をあの人の胸に”とキヨシローが切々と歌う、まるで遺作として発表するために作られたような曲だ。ロッキングオンの「忌野清志郎1951-2009」を読みながら聴く。チャボのインタビューが秀逸。キヨシローのことを好きだったすべての人に読んで欲しい。多分に誤解を招きそうな坂本龍一のインタビューも一読の価値あり。確かに人はいずれ死ぬのだから、思考停止状態でいたずらに泣き叫びその死を悼むよりも、生を見事に全うしてみせた彼の人生をわれわれファンは賞賛したいと思う。そういう追悼のしかたがあってもいいと思う。ご冥福を祈ります。これからも何か凹むことがあったら、“いいことばかりはありゃしない”と口ずさんで自分自身を笑いながら、そうやって乗り越えていきます。
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2009/06/15
TITLE:「 ハピネス! 」
![]() | ハピネス! (2009/06/09) 曽我部恵一BAND 商品詳細を見る |
「キラキラ!」からライブ盤「トキメキLIVE!」をはさんで今作が「ハピネス!」と、もう恥ずかしいくらい直球なタイトルが続いているが、今作こそまさに音がキラキラしている美しいロックンロール・アルバム。聴いていると笑ってしまうくらい良い。踊り出したくなるくらい良い。いや別にダンサブルな音楽という意味ではなくて、こんな何の気取りも屈折もないロックンロールを、いい年した男たちが演奏してるということが嬉しくてたまらなくなるのだ。もちろん聴くこちら側はそれなりに屈折してしまっているので、音はともかくあまりにもストレート過ぎる歌詞は若干気恥ずかしくもあるのだが。それ故にと言うか、だからこそと言うべきか、このアルバムは中高生に聴いて欲しいと切に思うが無理だろうなぁ。薄っぺらい人生賛歌みたいなヒップホップとか聴いて安易に励まされるより、これ聴いて夏の街へ飛び出していく方が若者らしくてむしろ頼もしいと思うがなぁ。現時点で今年度ベストワンのアルバム。ところで「東京ディズニーランド」というそのままのタイトルで、“ミッキーに会えるかな”と無邪気に歌う歌が収録されているが、これって名称の使用料とか発生するんだろうか、とかオトナはそんなことを考えたりするからダメだね。
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2009/06/14
TITLE:「 1Q84 」
1Q84 / 村上春樹amazonで予約していたおかげで発売日翌日に無事届いた。いつもならペロリと読んでしまうところだが、これだけ世間で話題になっていることだし、わざとゆっくり丁寧に読んだ。もしかしてこれから読もうと思っている人がいるかもしれないので、内容には出来るだけふれないことにする。読んでいる間、気になったことをいくつか。これは誰でも思うことだろうが、英訳するときタイトルはどうするのだろう。「9」と「Q」が同じ音ということを知らなければ、タイトルの洒落が分からないよな。重要な、と言うか主役のひとりに青豆という珍しい名前の女性がいるのだが(まずこの名前が姓なのか名なのか訝りながら読み進めることになるのだが、それは姓であることがやがてはっきりする)、彼女が地の文の中で終始、青豆と表記されるのだ。「青豆は考えた」とか「青豆は眠った」という感じで。下の名前は最後まで分からないということもあるが、こんなに重要な登場人物が苗字でしか表記されないということに最後まで違和感があった。ストーリーはこれで終わってると強引に言えば言えないこともないが、上下巻ではなく1,2巻なのでおそらく続きがあるのだろう。個人的には続いてくれないと納得できません。相変わらず非現実的なキャラクターがたくさん登場するのだが、いずれも読んでいくうちに現実にいる人間のある種の典型であるように見えてくるのが毎度のことながら不思議。それが著者の筆力と言ってしまえばそれまでだが、惚れ惚れするほど見事です。
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2009/06/12
TITLE:「 フランク・オコナー短篇集 」
![]() | フランク・オコナー短篇集 (岩波文庫) (2008/09/17) 阿部 公彦 商品詳細を見る |
何というかストーリーがしばらく進んだ後の映画を途中から観始めるような感じ。いくつかコミカルなものもあるが、全般的には愛想のない寒々とした短編小説集。しかし、或いはそれ故に、読後の余韻は決して軽くない。例えばどんな事情があったのかほとんど明らかにされず、息子の嫁をしばらく預かることになった老夫婦の物語である「マイケルの嫁」。夫婦や周囲の人びとのとまどいや喜びを丁寧に描くことによって、詳しい経緯は分からずとも、そこにはある種の人間の典型を見ることができるようでもある。むろん言うまでもなく一見何でもないごく普通の人びとにも、そこには固有の感情の起伏があるわけで、それをいかに一般化し読者の感情移入を容易にさせるかが小説家の腕だ。そういう意味では決して期待を裏切らない小説集だが、分かり易いエンタテインメントでないので多くの人に読まれるタイプの小説ではないだろうな。それで愛着が増すという屈折した気持ちも多少。
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