本とCDの日々(仮)
2006/12/28

TITLE:「 歌謡曲 名曲名盤ガイド1980’s 

歌謡曲 名曲名盤ガイド1980’s―Hotwax presents 歌謡曲 名曲名盤ガイド1980’s―Hotwax presents
(2006/06)
ウルトラヴァイヴ
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それにしてもComedy Club Kingの「Does Anybody Really Know What Time It Is?」はどうすれば手に入るのであろうか。そんなに熱意を持って探しているというわけでもないが,これだけ持ってないのが気持ち悪いので,何とか定価以下の金額で入手したいと願いつつ,今年も終わろうとしている。そういえばiTSでフリーダウンロードした安原義人朗読の筒井康隆「最後の喫煙者」があまりに面白かったため,つい窪田涼子の朗読による「問題外科」も購入してしまった。活字で読む分にはひえ〜ブラックだと笑って読み飛ばせたが,これがうら若き女性の声で朗読されると,何と言うか酸鼻を極める完全R指定のグロテスク。私のような血に弱い人間なら気持ち悪くなって軽い貧血状態になれます。実写でもアニメでも絶対映像化不可能。以上,本書と全く関係ない話。

さてやや値段が張るため購入をためらっていた本書を,お正月休みにゆっくり眺めようとAmazonで取り寄せてみた。これはまさしく80年代に青春を過ごした者には感涙を禁じ得ない,ある種の思い出再生本である。1980年4月のデビュー以来つねに80年代の先頭にいた松田聖子を筆頭に,アイドルの価値破壊とも呼ぶべきおニャン子クラブを経て,そうしたアイドルの時代の幻想を自ら終わらせたWinkまで,豊富なシングル,アルバムのジャケ写とマニアックなレビューで全く飽きさせません。ライター陣には懐かしや榊ひろと氏の名前も。「よい子の歌謡曲」毎号買ってました。巻末には80年代の代表的アイドルたちの全シングル・アルバムの発売日・ライターを押さえたディスコグラフィーも。これだけで何時間でも見ていられる。また中期以降はほとんどおニャン子の時代だったから仕方ないと言えば仕方ないことだが,秋元康の仕事量にも驚かされる。

その他,名前を見てあ〜そう言えばいたいたと思わず懐かしくなるアイドルや,誰?と首を傾げたくなるアイドルまでずらりと並んだ7インチシングルのジャケ写の一覧を見てると,何だか兵どもの夢の跡を眺めているような切ない気持ちにもなってくる。本当に成功するのは一握りの世界なんだな〜としみじみ思う。事件に全くふれていない岡田有希子についての堤昌司氏によるレビューに,少し泣きました。当時の音源が,もっと気軽にCDで手に入るようになると良いと思う。「1970's」も買おうかどうしようかと思案中だが多分結局は買うんだろう。


2006/12/26

TITLE:「 MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006 

MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006 MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006
ムーンライダーズ (2006/12/20)
Sony Music Direct
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CM音楽集って大瀧さんとか坂本龍一の真似じゃん、30周年だからってそこまで音源かき集めて商売しなくても・・などとほんの少し心の片隅で不満を抱きつつ買ったのだが、ごめんなさい、これがとんでもない名盤でございました。と言ってももともとムーンライダーズのファンじゃない人にどれだけアピールできる商品かは分からないが、ライダーズ好きな人なら完全に捨て曲なし、50曲余りすべて楽しめることは保証できます。

冒頭の、1977〜78年というまさにライダーズがバンドとして立ち上がった時期の鈴木慶一の手による3曲。これが今まで聴いたことがなかったのが申し訳ないくらいの極上のメロディだった。たとえ音は古びてもメロディは古くならない。確かに今回のリマスタリング再発で格段に音がブラッシュアップされたので、アーリー・ライダーズのアルバムの印象は随分変わっていた。しかしそれらのアルバムと同時期にCM音楽としてこういうメロディが存在していたと思うと、それら初期のアルバムの輝きというか価値というか、さらに増したような気がするのは私だけでしょうか。

そしてどんなメロディを書いてもどこかにらしさの残る鈴木慶一に対して、どんな商品にもカラフルで耳に心地よいメロディをつける岡田徹の才能が今更ながら恐ろしい。あるいは深刻になる寸前でポップに踏みとどまるかのごとき哀愁のかしぶちメロディ。ありきたりの言い方で申し訳ないが、1分前後というフォーマットだけに、濃縮された各人の才能のエッセンスを感じることができる。そしてそれを無責任な観客として少しずつつまみ食いしているような幸福。

結成30周年の怒涛のリリースの中でむりやり順位をつけると当然1位は待望のオリジナルである「ムーン・オーヴァー・ザ・ローズバッド」だが、2位につけるのがこのアルバムかも。冗談じゃなくそれくらい良い。いっそ「架空映画音楽集」ならぬ「架空CM音楽集」というタイトルで、6人のメンバーが1分前後の曲を10曲ずつ持ち寄って1枚のアルバムを作るという企画はどうだ。きっとラジオやテレビのジングルに使われまくると思うぞ。売れるかも。

2006/12/22

TITLE:「 スノウホワイト グリムのような物語 

スノウホワイト グリムのような物語 スノウホワイト グリムのような物語
諸星 大二郎 (2006/11/30)
東京創元社
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サブタイトルに「グリムのような物語」とあるように、どれもどこかで聞いたことがあるような話なのだが、そこは天才諸星大二郎的な換骨奪胎と言うか脱構築と言うか大胆な翻訳解釈がなされていて、ホントにこの人は真面目なのかふざけているのかまるで分からないよなぁ。いや大変面白いのだが。

表題作の「スノウホワイト」は言わずと知れた白雪姫。タイトルに反してロマンチックな要素は微塵もなく、恐らくよりグリムの原作に近いのだろうと思われるホラーになってます。「ラプンツェル」は同じ題材の物語が「トゥルーデおばさん」にもあったが、こちらの方がより即物的なSFになっていて分かり易い。そして特筆すべきはギャグ路線の「めんどりはなぜ死んだか」と「藁と炭とそら豆」,どちらも同じ結末なのだが,法廷ドラマにしてみたとか推理物にしてみたとか著者自身による生真面目な解説解題が逆におかしい。時々こういう作品を書いて読者を煙に巻くようなところのある人だよな。そしてこちらは本領発揮の不気味な戦慄が走る「とりかえっ子の話」,最後の見開きには肌が粟立ちます。ラストの小人の空疎な笑い声が実際に聴こえるよう。

別にクリスマス仕様ということもないのだろうが,全体に白の美しい装幀は汚れた手で触れるのがためらわれるほど。1000円という金額はやや微妙な気もするが,いや,中身の充実度からすれば安いと思います。読んで損なし。と思うが,生理的に著者の絵を受け付けないという人もたまにいますね。それにしてもこの著者はつくづく変な人だよなと,今更のように思ったのでした。

2006/12/17

TITLE:「 ムーンライダーズのいい仕事!Sony Music編 

ムーンライダーズのいい仕事!Sony Music編 ムーンライダーズのいい仕事!Sony Music編
オムニバス、渡辺美奈代 他 (2006/12/13)
Sony Music Direct
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5年ぶりのシリーズ新作。既発のシリーズとジャケ写を揃えたのは感心だが残念ながら背のデザインが合わない。まあSONYは背の統一感が命だから仕方ないのかもしれないけど。ホントに出ただけでも良しとするべきか。他のレコード会社はまた5年待たなきゃいけないのかな。

恥ずかしながら岡田徹経由のプリプリの音って初めて聴いた。「KISSで犯罪」、何とか全曲聴きたいものだ。もう1回廉価でCD化してほしい。でもプリプリのCD買うのって渡辺美奈代のCD買うより恥ずかしい。ひそかに期待していたSteve Hiettもライナーにある通り当時の武川ソロの延長的な音。まあ1曲聴けただけでも幸運だったかな。ZELDAの「湖のステップ」はライナーに何も書いてないけどlive version?このversionはたぶん初めて聴いた。「空色帽子の日」は名盤(ホントに呆れるほど捨て曲なし。「FOOLISH GO-ER」名曲。これをカバーした大槻ケンヂは流石)。ZELDAの歴史については「GOLDEN☆BEST/ZELDA-time spiral」の小嶋さちほ本人のライナーに詳しいが、カラフルでハネるバンドになってから魅力を失っていったのも確かなんだよな。難しい。真鍋ちえみは去年CD化された「不思議・少女+」にボーナストラックで入ってたからなぁ。むろん当時のテクノ歌謡のベストチューンなのだが、ありがた味に欠ける。PSY・Sの名盤「Collection」からの収録は嬉しい。これもある意味ZELDAつながり。久保田洋司の「絵に描いたよりPictureness」が大好きなのだが懐かしの東南西北も1曲入ってるしそもそもライダーズがらみじゃないのか。中古でも手に入るうちにぜひ。

しかしライナーにもあるがRajieの「キャトル」と「真昼の舗道」はCD化する気あるのか。じわじわ小出しにするのやめてほしいよな。中原理恵も梓みちよの加藤和彦プロデュースものも早くCD化しなきゃね。する気あるのかな。それからライナーでもふれられてる桂木文の「ひとりぼっちのコンチェルト」、これも早くCD化してくれないとカセットテープ擦り切れます(MDに移せよ)。その際はぜひレコードの時みたいないい加減なクレジットはやめて下さいね。これは多分Alfa(違ったらごめんなさい)。桂木文は好きだったんだけど,何と言うか芸能界で身も心もボロボロになった人というイメージが強くて思い出すと悲しくなる。今幸せだといいなぁ。加藤和彦で思い出したが宮崎美子の「わたしの気分はサングリア」とか(ファーストは最近CD化されたけど。なぜファーストだけ?)も早くCD化すべきだよな。


2006/12/16

TITLE:「 男坂 

男坂 男坂
志水 辰夫 (2006/12)
文藝春秋
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例によって余計な贅肉を一切そぎ落としたような,無愛想なと言ってもいいくらいの寡黙な短編集。出張先へ向かうバスの中で黙々と読了したが,何と言うか心の中に一陣の冷たい風が吹くような。それが決して不快な感じではない。無意味な饒舌と喧騒にまみれた己の実のない日常を猛烈に反省したくなる。

例えば収録作のひとつ「再会」では、清掃会社で働く初老の主人公が二十数年ぶりにいちばん会いたくない男と偶然再会するシーンから話は始まる。主人公とこの男とはどういう関係なのか。あれこれと想像しながら読み進むのだが、主人公は過去の因縁からその男に金をゆすられることになる。主人公は乏しい収入にもかかわらずその脅迫に諾々と従うところから、およそただ事ではない事情があるのだろうが、それが一体どんな事情なのか分からない。著者が説明するはずがない。主人公が帰宅すると、中学生の娘が待っている。妻はもう寝ている。どうも病気のようだ。ここで主人公は男との因縁を回想する。ようやく読者は事情が分かってくるのだが、現在の主人公の妻の名前と回想に登場する相手の男の妻の名前とが同じことを不審に思う。うまいよな。翌朝主人公の作った朝食の匂いに「おいしそうな匂い」と言って壁伝いに起き出して来る。鈍感な私はピンと来なかったが、主人公の妻は目が見えないらしいのだ。ここから先のストーリーはぜひ本書を読んでほしいと思うが、ラストの鮮やかさには呆然とした。しびれた。バスの中でひとり涙をぬぐった。

人生に見切りをつけながらも、一方でまだ何かをあきらめきれずに生きる男たち。或いはその周りでそれを見つめている女たちの物語。全編、読み終わるとほーっとため息をつき、そしてそこに描かれているそれぞれの人生の容赦のなさに、身震いをするようでもある。解説で大矢博子氏もふれているが、登場人物たちの心情を饒舌に描写しない分、天候や風景などが見事な小道具として活かされている。ハードボイルドと言ってしまうと思考停止の安易なカテゴライズのようで嫌なのだが、しかし手ざわりはひんやりとしているのに、芯の部分で熱い男の思いを感じ取れる、そんな小説世界を堪能できる。寒い冬の夜の読書におすすめ。

2006/12/08

TITLE:「 STARBOW 1 

スターボーI たんぽぽ畑でつかまえて(紙ジャケット仕様) スターボーI たんぽぽ畑でつかまえて(紙ジャケット仕様)
スターボー (2006/07/19)
インディペンデントレーベル
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買うべきか思いとどまるべきか悩んだ末に購入。出たのは7月だから随分悩んだものだ。宇宙三銃士(笑)スターボーの1枚のみのアルバムにシングル音源を収録したコンプリート盤(と言っても全17曲)。しかしこんなものまで買ってたらこの年末の再発の嵐の中、いくらお小遣いがあっても足りないぜ、と呟きつつ。ともかくキワモノ的な扱いをされがちなデビューシングルの2曲しか聴いたことがなかったので、華のないジャケ写に不安を抱きながらも,とりあえず怖いもの見たさで恐る恐る聴いてみた。

アルバム(発売当時)のA面は、件のデビューシングルを中心にした、本人たちの手書きによるライナー曰く「太陽系の10番目の惑星を脱出し、偶然に地球へ出現した」という設定で、B面は一転セカンドシングル中心の「大変身して普通の女の子として活躍して」いるという設定。これだけでおいおい大丈夫かよと更に不安になり、こんなものを買ってしまった自分の見境なさに絶望したくもなる。しかし何と、クレジットを見たら、A面のデビューシングル2曲は細野さんの作編曲だが、他は作曲・細野さん、そして編曲は清水信之じゃないの。これはもしかして当たりか!?と激しく期待しつつ、CDプレイヤーのトレイに載せる。作詞は当然、御大松本隆だ。

1曲目、「プロローグ」というタイトルの清水信之作編曲のインストで幕を開ける。これが名盤「Anything Goes(CD化熱烈熱望!)」を髣髴とさせる、きらびやかなエレクトロ・ポップ。その後、歌もの5曲を挟んで「エピローグ」で終わる構成だが、いやどの曲のアレンジも清水信之の才能炸裂の80年代的歌謡曲。涙なしに聴けません。個人的ベストはひとりYMO的な「火星のプリンセス」。多分ギターも本人が弾いてるんじゃないかな。松本隆の歌詞もスペイシーで適度にチープでしびれます。全国にどれだけいるか知らないが、清水信之ファン,特に真鍋ちえみの「不思議・少女」の再発に狂喜した人は必聴。さあ次はいよいよ徳丸純子「青のないパレット」の再発だ。当然シングル「蒼いサスペンス/シルバー模様」と「魔法のカプセル」,つまり清水アレンジ曲は完全収録でお願いします。

えーと、普通の女の子サイドも、職人馬飼野康二がほとんどのアレンジを手がけてて堅実と言えば堅実だが,21世紀に聴く面白みには欠ける。辻畑ピカソ鉄也氏の曲もあったりします。

2006/12/01

TITLE:「 愛はすべてを赦す 

愛はすべてを赦す 愛はすべてを赦す
加藤登紀子 (2006/11/01)
ユニバーサルJ
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坂本龍一の名前を強烈に意識するようになったのは,実はYMOではなく大貫妙子のアルバム「アヴァンチュール」のアレンジが最初だった。それまでYMOなんてピコピコ言ってるだけの子供だましの音楽だと,自分だって充分子供のくせに生意気にもそう思っていたのだ。しかし「アヴァンチュール」の異常に気持ちの良いアレンジ(当時は編曲ということが良く分かってなかったから単純に音の気持ち良さ)で坂本龍一の音楽をもっと聴きたくなり,遡って大貫さんの前作「ロマンティーク」,そして坂本本人のソロ「B-2 UNIT」と聴いて,完全に参ってしまった。今までこんなにオシャレでカッコいい音は聴いたことがない!と思ってしまったのだ(子供のくせにね)。

そこから完全なる坂本ミーハーになった私は,坂本が手がけたというだけで手に入る限りの音源を聴き漁るようになった。YMO関連あるいはソロ関連はもちろん,伊藤つかさ「恋はルンルン」や三田寛子「夏の雫」などのアイドルものから,前川清美空ひばりといった演歌路線。地味なところでは来生たかお飯島真理。或いは坂本の名前がなかったらまず聴かなかったであろう山下洋輔との「Asian Games」や酒井俊「My Imagination」といったジャズ方面まで。この坂本龍一が関わっていなかったら聴かなかったであろうというところが肝心で,例えばダンスリーとの共作「the end of asia」,古楽器による中世・ルネサンス音楽なんてまず自分から聴くことなんてないだろう。それがすっかり20年来のお気に入りの1枚になるから縁とは不思議なものである。

前置きが長くなったが,つまりこの加藤登紀子の2枚のアルバムも同様。1982年発表の本作では,坂本本人のピアノをバックにいわゆるブレヒトソング(それ何?って聞かないでね。答えられないから)など1930年代のドイツや東欧の歌のカバー。翌年の「夢の人魚」では上野ゲルニカ耕路も参加して大正から昭和初期の日本の歌謡曲のカバー。いずれも唯一無二の誰にも真似のできない世界を構築していて素晴らしい。そうやって坂本龍一があたかも雑食動物のようにあらゆるジャンルで仕事をしてくれたおかげで,われわれファンも結果的にいろんなタイプの音楽を偏見なく聴く機会を得ることができた,これはものすごく幸運なことだったのだなぁと今しみじみ思う。今,若い人にそういう聴かれ方をしてるミュージシャンって,誰かいるだろうか。